ROOM No.1301

ROOM NO.1301 ♯5 (富士見ミステリー文庫)

ROOM NO.1301 ♯5 (富士見ミステリー文庫)

今年大注目のシリーズ第5巻が発売されました。
5巻は4巻からの窪塚姉妹編の後編なので、4巻から読み直した。


あーやばい。マジおもしろい(笑)


4巻で主要キャラが出揃った感じなので、今回はとてつもない出来事が起こるわけでもなく、結構おとなしい展開なのがやや失速気味ではあるけど、それでも面白いです。
第一、1巻のプロローグで、1巻には出てこないキャラが名前だけ出まくってたのがおかしい。打ち切りになってたらどうしてくれたんだ(笑)
この本は、2巻から本格登場した有馬冴子がとてもキーポイントになってると思う。
本当の恋人なんてぶっちゃけ脇役では(^^;
13階の住人の中でも、とりわけ冗談のようでものすごくシリアスな「セックスをしないと眠れない」という問題を抱えているクラスメイト有馬冴子。彼女は主人公健一と同じ1303号室の鍵を手に入れていた。
このマンションは12階建て。13階には、偶然だけど必然。必要なときに必要な者のもとに渡る特殊な鍵がないと来ることができない。
健一は冴子を助けるために恋人がいながらも体を重ねていくが…。
冷めているようで健気な冴子は読者の心を鷲づかみでしょう。1302の八雲刻也じゃないけど、彼女には幸せになって欲しいと願うばかり。
でも…毎回ある5年後の語りによるプロローグの文から察するに…その可能性は低そうなんだけれど(ノд`)
で、これ口コミで大人気って宣伝文句になってるんだけど、おそらく2ちゃんねるのことでは?
ラノベ大賞上位ランクインだし、俺もその評価で買った。
最初は、ライトノベルの限界に挑戦するえエロさ(もちろん18禁になるような直接的なシーン描写はないが)が話題だったけど、それだけじゃラノベ大賞に常連ランクインなどできない。
すごく文章がおもしろいのだ。
あと、たびたび出てくる哲学的な表現というか、当たり前の言葉に対する疑問と解釈というか。
例えば冴子は、謝るという表現に対して、「こんなに謝ってるのになんで許してくれないの!?」ってな表現は本末転倒で、謝るのは自分が悪いことを認め、相手に申し訳ないという気持ちを伝える行為、そもそもその行為自体が、自分の自己満足なのであり、本来は行動で示し償うのが先で。感謝も同様で、お礼を言うと完結した気になったりするが、本当は嬉しかったと思った分だけ相手に行動でお返しするべきだと思う、だから私は謝罪な感謝の言葉があんまり好きじゃないみたいなことを言うシーンがあるんだけど、こういう表現が時々あって、とても頭の刺激になるのだ。
健一の受難やモラトリアム的な悩みを通して、様々な価値観が飛び交うこの小説には、名ゼリフといえるものが多く存在し、まさに見かけによらない口コミ名作だと思う。
表紙は微妙だしやったとかやらないとかって表現がたくさん出てくるけど、実は10代のラノベ好きにはぜひ読んでもらいたいと思う作品なのでした。
ちなみに次回は、本編はお休みで短編集らしいです。