葉桜が来た夏

≪ねぇ学――≫
≪断る≫
第14回電撃小説大賞〈選考委員奨励賞〉受賞作


良質なボーイ・ミーツ・ガールストーリーでした。
他種族アポストリを毛嫌いしていた主人公と、アポストリのヒロインが出会い、衝突し、自身をさらけ出し、障害を乗り越え理解を深めてゆく。
最初は憎悪の感情むき出しの主人公だけど、葉桜のまっすぐさを嫌うことができずに、そして自身もまっすぐに向き合い受け入れてゆくのでとても好感が持てる。


何を書いても重大なネタバレになりそうなので避けておくけど、文章としては、ページ数の割にやけに内容が多い。
ひとつの場面は短いのに含まれてる情報は多く、結果としてテンポよく次々を話が展開していくため読み止めどころが見つからないくらいサクサク読める。
ただ、受賞作を出版に際していじったのか元からこうなのか分からないけど、微妙に矛盾があったり(春木も評議会も管理外のアポストリはいないと断言)、先代の評議会議長とか匂わせておいたのに回収されない結構重要な伏線があったりする。
世界観よりも主人公二人の心のふれあいと成長に重きを置いたんじゃないかと思うけど、脇役たちの行動の理由や背景はちょっと語り足らずかな。
それでもかなり面白かった。
今のところ今年読んだ30冊のうちベスト3に入るほど良かった。
デビュー作でこれなので、次作に注目。